フランス ル・コルビュジエと現代建築の旅

G-5.ルイヴィトン美術館

ルイビトン財団美術館

フォーロム・デ・アールForum des Halles

ここで、今回電車の乗換えで利用したシャトレ・レ・アル(Châtelet -Les Hallea)駅にあるフォーロム・デ・アールについて触れたいと思います 。

シャトレ・レ・アル駅には6本の地下鉄と3本の近郊線が接続しており世界最大の地下鉄駅と言われています。それを象徴するかの様に2016年4月にパトリック・ベルジェ(Patrick Berger)によるガラスの葉”カノペ(Canopée)“と言われる黄金色に輝く大屋根が完成、商業施設”フォーラム・デ・アール“もリニューアルオープンしました。その有機的な形にこれからの一つの建築の流れを感じさせます。

ここは古くは12世紀に遡りパリの中央市場(Halles)が長らくあったところです。

近代においてはヴィクトール・バルタール(Victor Baltard)が1866年鉄とガラスの10(1936年12棟)のパヴィリオンを建設しました。その先進的な建物は当時から高く評価されていた様です。

ところがパリ市が商業地区として更に発展させる為に再開発を実行。1969年由緒ある建物は一部移転されたもの跡形もなく解体されてしまいました。その一部の骨組みは価値を認めた横浜市の要望で現在横浜の旧フランス領事館跡に設置されています。

 

都市開発という事ではその場所はコルビュジエが1925年パリ・ヴォアサン計画説明の記録映像で開発の要として指し示している場所でもあります

その再開発に沿ってクロード・ヴァスコ (Claude Vasconi)とジョルジュ・パンクレッシュ(Georges Pencreac’h)により1979年商業施設”フォーラム・デ・アール“がオープンしました。当時、”ガラスの滝“といわれた半地下に展開するショッピング街は、いろんな店が入っていて私などは市場らしいい雰囲気でそれなりに楽しいところでしたが、施設がもともと中途半端で老朽化してきたので再び再開発されることになった様です。その後、再開発案は二三転したようですが2007年に今回の大屋根構想になったとの事です。

関係者によると”レ・アルはうまく老いるのに失敗した”と言われるそうですが正にその通りと思います。もし時計の針を戻せるならば、きっとバルタールのパビリオンを生かした価値ある再開発が考えられたと思います。

ショッピングエリアはリニューアルと言っても昔と全然変わってしまった様です。fancなどは健在で懐かしいところです。無印良品のきれいなお店もありました。日本にあるのにと思いつつもつい色々見てしまいました。レゴのお店ではフランスの名所の建築がレゴで展示されていました。結構忠実に再現されて面白いと思いましたが、ここでユニテとかロンシャン礼拝堂などが展示されていればそれは感激するところでしたが、、、、

一日利用者数80万人のターミナル駅を抱えますから多くの人が通るのは当然として、いかにその多くの人々の心をつかみ足を止めさせられるか、大屋根だけに頼らずこれからではないでしょうか。

 

ところで、レ・アル地区の西の端にあるドーム型の旧商品取引所の建物を生かした現代美術館が安藤忠雄氏設計で2019年オープンする様です。きっとバルタールのパビリオン解体の反省が有るのでしょうね。

ルイヴィトン財団美術館 (Foundation Luis Vuitton) 2014

ルイヴィトン財団美術館へは凱旋門からミニシャトルバス(片道1€)が利用できますが、周囲を散策しながら行きたいと思い最寄り駅の(M)Les Sablons(レ・サブロン駅)から歩く事にしました。駅からブローニュの森に来ると、公園の中をミニトレインが走っているところを通ります。この狭軌鉄道は1878年のパリ万博会場用として作られた古いものですが今も人々に親しまれて残っています。この辺りは馴化園(Jardin d'Acclimatation)と言われ遊園地や動物園があり今日は土曜日とあって家族れでにぎわっています。そしてルイヴィトン財団美術館もその馴化園の中にあります。更に歩くと、大きな帆船の様なものが見えてきました。すぐそれがルイビトン財団美術館と分かりましたが、東京のルイヴィトン美術館展で見てた写真や模型は真っ白でしたので、赤や青に色彩りされた姿にびっくりです。でも光に反射してとてもきれいです。

これは一か月前よりダニュエル・ビュラン(Daniel Buren)が”Light of Obsrvatory of Daniel Buren"として美術館の12の帆、3600枚のガラスに13色のカラーフイルムを貼った期間限定パーフォンマンスであることが分かりました。ビュランはストライブ柄をいろんな建物に施す事で有名ですが、数年前にはマルセイユのユニテ・ダビタシオンの屋上もカラフルに変身させています。光へのこだわりはコルビュジエもビュランもアプローチは違えど似ていますね。それにしてもこの湾曲した大きな帆にカラーシートを張るのは大変だったでしょう。旅の最後に思わぬプレゼントをして貰った気分です。

どことからもなくかすかにクラシックの音楽が聞こえてきました。建物の下の方を見ると中ではコンサートが開かれている様です。周りに人も増えてきました。

チケットを買って中に入ると、そのホールではお子さんたちを対象とした何かのイベントをやっている様でした。ルイビトン財団美術館がどんな所か少し分かってきました。ブローニュの森の中、馴化園の中に作った狙いもなんとなく分かってきました。

中に入って高い天井のロビー、それを支える太い構造体を見て建物が大きい事が分かります。と言いますか構造が複雑なので直ぐには全体像がつかめないといったところです。館内には11のギャラリーと所々にテラスがあり上がっていくとそれを支える建築構造が直に確認できます。ガラスの帆の中は屋内の様でもあり野外の様でもあり不思議な空間です。ビュランによる色彩を帯びた光が反射し陰影を作りアートに包まれています。

建物を上がって来るとガラスの帆の間から外への視野が開けてきます。ブローニュの森の先に、今回は訪問する時間がなかったデファンス地区の高層ビル群が見えます。別の方角では古い街並みの上にエッフェル塔も見えます。ルイヴィトン財団美術館はここブローニュの森で新しいパリ、古いパリに囲まれている様です。

こうして景色を見ていると、昔ポンピドゥセンターが出来て間もない頃、屋上からはサクレクール寺院などパリの街並みが良く見えた事を思い出しました。ポンピドゥセンターが出来た頃はその独特な外観からこれがパリに馴染むかどうかの議論がかなり有りました。しかし今日パリの人気スポットの上位に入っています。それは、私は、当時議論されたパイプむき出しの奇抜な外観ではなく、設備関連を外にまとめることにより得られた広い空間にコルビュジエが提唱した美術館をはじめ様々な文化施設を利便性を持ってコンパクトに設置、それでスペースを確保して更に傍に広場を作ったトータルデザインにあると思います。それが年を経てパリに住む人、訪れる人の心を引きつけているのでしょう。

フランクゲリーのルイヴィトン財団美術館は目の前にするとすごい建築です。そしてそれをブローニュの森に美術館が求められたのが分かります。美術館はまず所蔵の素晴らしい現代アートを展示する使命があるのでしょうが、さらに何かを発信しようとされている活動が確かに感じられました。それはブローニュの森を航行しながらパリ中にそして世界に向けてかも知れません。きっと、次の時代に向けてパリに住む人、訪れる人々に向けて新たな存在感を示していくのだろうな、パリの持つ懐の深さの様なものを感じられるにはいられませんでした。

 

ホテルに戻り荷物を受け取り、帰国の為、いよいよCDG空港へ向かいます。

今回の旅で訪れたコルビュジエの建築はどれも期待した以上で多くの感銘を受けました。そして強く印象に残ったのはユニテ・ダビダシオン、ラ・ツーレット修道院、ロンシャン礼拝堂、どれもフランス社会の中で今も立派に現役である事でした。

何十年も前のコンクリートによる先進的な建築、そこには現在も人々の心を掴み続ける様々な仕掛けが埋め込まれていたのが分かりました。 ルイビトン財団美術館の建物も正に先進的です。同時にそこに来てみると未来に向けて人々の心を掴もうとしている姿を感じ取れました。

また何年かしたらフランスに来て見なければ、そんな思いを持ちながら一週間の旅を終わりました。

 

ルイヴィトン美術館展(日本)にて