フランス ル・コルビュジエと現代建築の旅

F-3.ベルフォール

電車はロンシャンから20分でベルフォールに戻ってきました。

折角のベルフォール、パリに出発する前に少し時間があるので街を散策する事にしました。目的の一つは巨大なベルフォールのライオン像を見る事。更には近代日本史にも登場するフランス軍人の出身地べルフォールがどんな街なのか少しでも見てみたいと思った事が有りました。そして三つ目の目的は本編の”旅のおまけ“で紹介します。

駅からライオン像のある砦に向かって歩きます。じきに街中を流れるサヴルーズ川に出ますがこの川沿いはきれいな街並みです。

 

市内を流れるザヴルーズ川

しかし川を渡ったあたりから、少し景観がかわってきます。

建物があまり密集しなくなり稜堡の形をとどめた遺構の一部が目についてきます。そして奥に崖の上に建つ大きな要塞が見えてきました。ベルフォールは周囲の地形(Belfort Gap)から古くより戦略的に重要な場所で、近代は大砲の進歩と共に街は星形要塞化されてきました。そもそも〝Belfort”fort”はフランス語では塞“の意味が有りますね。昔ヨーロッパでいくつか星形要塞は見たことがありますが、こんな高低差を持つ強固そうな星形要塞は他に見たことがありません。そしてその崖の懐にライオン像が確認できます。近づくとその像はかなり大きい事が分かります。大きな要塞を背景に存在感を示すとなるとこの位の大きさが求められたのでしょう。そして、このライオン像の向こう裏側にも稜堡が幾重にも作られています。

この高さ11mのライオン像は普仏戦争(1870-1871年)での、この地のフランス軍の健闘を記念して後にニューヨークの自由の女神を作ったバルトルディ(Auguste Bartholdi)が製作しました。像はドイツとの境にあるヴォージュ山脈の赤い砂岩のブロックが積み上げられてできており独特の色合いを持っています。ロンシャンの礼拝堂の丘もヴォージュ山脈の端にあり、この赤い砂岩で出来ている丘です。戦争はフランスが負けたのですが、それでもその奮闘を記念してこんな大きな像を作ったのは凄い思いれですね。

そうした状況だったからでしょうか、敗戦の結果、当初ベルフォール地方がアルザス地方と共にドイツに割譲され様としたのがベルフォールの強い抵抗にあった為、代わりにローレーヌ地方が割譲されたとの事です。

という事は、もしべルフォール地方が其のままドイツ領になっていれば、その後の変遷も変わり、ひょっとしたらロンシャン礼拝堂のドイツ軍による破壊もなくその後のコルビュジエのロンシャン礼拝堂再建の機会もなかったかもしれませんね。

赤い砂岩のベルフォール大聖堂(修復中)

 ベルフォール出身の軍人とはジュール・ブリュネ(Jules Brunet)の事です。彼はナポレオン三世の命で1867年江戸幕府の軍事顧問副団長として来日、幕府側総崩れの中にあっても最後はフランス軍人の職を辞して函館戦争(1869年)まで新選組の榎本や土方らと一緒に戦い抜いたつわものです。ベルフォールと同じ星形要塞として作られたのが函館戦争の舞台となった五稜郭です。元々砲兵大尉であったブリュネにとってはそこは活躍しやすい場所だった事でしょう。その後帰国して軍に復帰、今度はこの普仏戦争に参加します。そのフランスサムライ魂はべルフォールの戦いの粘りに通じている様でもあります。後に彼はフランス陸軍総参謀長にまでなっています。映画”ラストサムライ”の主人公のモデルとなった人です。

塞の上ではためくフランス国旗を見上げるに、昔から戦いの要の地であったベルフォールの風土が今も受け継がれている様でもありました。

ホテルで荷物を受け取り、ベルフォールーモントベルリアール(Belfort-MontBéliaird )TGV駅へ向かいます。TGV駅行きバスは、ベルフォール駅前右手より毎時4本程度ありました。ただ駅前の時刻表では日曜・休日は一時間に1本(各34分)の表示でしたので利用には注意が必要でしょう。

Belfort-MontBéliaird TGV駅は2011年竣工の新駅で全体がチューブのようなユニークな形をしています。設計はフランスの建築家で鉄道橋梁などを手掛けているジャン・フランソワ・ブラス(JeanFrançoisBlassel)で、彼はレゾ・ピアノ(ReznoPiano)の事務所で仕事をしている時期もあったようです。

2018年にはSNCFがスイス側鉄道路線に繋ぐBelfort -Delle線を復活させる様です。途中Belfort-MontBéliaird TGV駅を通りますので、このローカル線の利用、さらにはスイスへの新たな旅行ルートが考えられます。

(補足)2018年12月Belfort-Delle線は運行開始しました。Belfort駅から Belfort-MontBéliaird TGVホーム傍まで約10分で到着。

Belfort-MontBéliaird 駅構内

4時過ぎ出発したTGV6706は2時間半かけてパリ・リヨン駅に向かいました。

ところでこの日は英国のEU離脱の是非を問う英国国民投票の日でした。そんなこともあり、車中、ライオン像といえは日本人にはやっぱり三越のライオンで有名なロンドントラファルガー広場のライオン(1867年建設)だよなと思っていました。そっちのライオンが予想外に大暴れする事になるとは、、パリに着いて次の日ユーロの急落でブレグジットを知った次第です

ベルフォール要塞のフランス国旗