
青年と文化の家
フェルミニ(Firminy)の駅前には路線バスが何台か止まっており遅れを取り戻すため利用しようと思いましたが、駅から直接コルビュジエサイトの方に行く路線は見つけられませんでした。考えてみれば、駅からは歩いて15分程度ですし、街中を歩けばフェルミニの雰囲気も少しは分かると思いマイペースで歩くことにしました。それで見つけ易いと思ったサン・ピレール教会を目指してメインストリートのジャン・ジョレス
通り(Rue Jean Jaurès)を西に10分程度歩いて左に曲がるとその先に教会の裏手が見えてきました。

見学ツアーは7月からは毎日有るようですが、この時期は週一回で今日はなく、各自で自由に見学するチケットを買いました。ツアーに参加できればいろんな情報も得られるのでしょうが、ほとんど見学者がいない中、自分のペースでコルビュジエの作品と静かに向き合えるのも悪くありませんでした。チケットオフィスは、青年文化の家(Maison de la Culture)と教会の中にあります。お勧めの見学順路はパンフレットや、ところどころにある案内板に表示されておりこの通り青年と文化の家から見学するのがよいでしょう。
青年と文化の家(Maison de la Culture)
私にとっては、その青年と文化の家がここフェルミニでは一番興味ある建築です。それは当初スタジアムのスタンドと一体で設けられるはずだったものを事情によりその反対側に独立して設けることになったとか。弓なりの天井が印象的です。このデザインが良いですね。しかも吊り天井で実現されています。そして道路側から見える側壁には、コルビュジエがコンクリート打ち込みの途中から図柄を付けようとした為、上部は凹、下部は後から付けた凸の組み合わせなっているのがはっきりわかります。実物を見て納得です。(トップ写真)中の展示室には、ここフェルミニでの開発の資料が展示されておりこれも見逃せません。それとワイヤーで張られたカーブした天井も。



各部屋を見学した後、スタジアム(Stade)側へのドアが開くのでそこが順路と思い外階段を下り野外舞台に降りました。見上げると昔石切り場だった名残のがけの上に立つ文化会館が頭上に迫り違う姿を見せています。
そこからはトラックの周りに沿って歩き始めましたが、誰もいない中、この雑草の茂る方向で本当にいいのか多少不安ではありました。それでも何とかスタジアムの横にたどり着きました。そこでこのルートで気に入ったビューポイントを見つけました。


それはスタジアムの裏側面にある細い階段を上がったスタンドの上、換気口らしき円筒のそばです。ここからは、特徴のあるスタジアムの屋根、青年と文化の家方向を見れば昔の石切場を利用して落ち込んでいるグラウンド、そして崖の上に立つ青年と文化の家、さらに振り向けばそばに教会、遠くにユニテと、コルビィジエ"Firminy-Vert"の全体が緑と共に見渡せます。
サン・ピエール教会(Église Saint-Pierre)

サン・ピエール教会では中を自由に見ることが出来ます。この日は見学中誰にもあわず教会が貸切状態でした。先ず下層の建築模型などの展示資料室を見て、その後中二階に上がりドアを開ければ教会内部への通路に通じます。
そして少し進めば光の窓と共に巨大な空間が目に飛び込んでいきます。誰もいませんので少し怖い感じさえします。それでも上に向かう通路の導線を何度も確認です。2000年代の建設ですからコンクリートの質感はやはり他のコルビュジエ建築とは異なった印象です。それでもデザインのすばらしさは元より、上方から差し込む光の束、そして周りのカラフルな窓からの柔らかい明りにやはりコルビュジエだなと素直に感じられました。



教会の隣にはコルビュジエ設計の屋内プール施設(Piscine)あります。人工波発生機もあったとか、残っているならばコルビュジエらしい仕組みを見てみたかったのですが人影もなく今日はどうも閉まっているようでした。

屋内プール(Piscine)
ユニテ・ダビタシオン(Unité d'habitation)
見学コースの終点は小高い丘の上にあるフェルミニのユニテ・ダビタシオンです。そこまでは緩やかな登り道が続きます。周辺はフランスのいろんな集合住宅の街並みとなっていますのでそれを見ながら進むと飽きません。それらの住宅の頂点にユニテがドンと鎮座しているです。

ただ今朝、マルセイユのユニテから来た者にとっては、簡素化されたピロティ、庶民的なベランダの風景もあって正直感動はあまりありませんでした。それでも入り口付近のコルビュジエのモニュメントや壁のモジュロールを見ると明らかに特別な建築である事を示しています。モデュロールの壁の前でボール蹴りをしていた少年たちもそんな誇りを持った目で「また見に来ている、、」とこっちをチラッと見ているようでした。


さて時間が押してきたので早々に駅に戻ることにしました。それでユニテから少し下ったところに“Le Corbusier”と言うバス停を見つけました。TV『美の巨人、フェルミニ』で出てきた停留所です。しかし路線図を見るとこの路線33番は全く違う方面に行くようです。それで駅までのだらだら坂をがんばって歩くことにしました。
フェルミニでのバス路線で気に留めておきたいのはサン・ピエール教会の前のバス停“Église Corbusier”とサン・テテイエンヌ(Saint-Étienne)のベルヴュー(Bellevue)駅を結ぶ路線1番のバスです。教会前からサン・テティエンヌまでは約30分です。サン・テティエンヌはユネスコより「歴史とアートな街」として認定されており時間があればシテ・デュ・デザイン等を寄ってみたいところです。また本編の“旅の準備”で触れたローカル鉄道が運休の時TGVでサン・テテイエンヌまで行きそこからフェルミニそれもサン・ピエール教会前に着くバス路線です。

駅への下り道(Rue Victor Hugo)
