フランス ル・コルビュジエと現代建築の旅

C-3.リヨン・コンフュランス地区

さてフェルミニ駅に戻り、多くの現代建築が立ち並ぶリヨン再開発地区(コンフュランス地区)の現代建築訪問の為、リヨン・ペラーシュ(Perrache)行き電車に乗ります。ペラーシュ駅はリヨンよりフェルミニに行く電車が多く出ている駅で、専用ホームが本線ホームとは別のところに列車止であります。

そして駅近くではこのコンフュランス地区の真ん中を高架で通り抜けますので、車窓より現代建築群を違った角度で見ることができます。隈研吾氏設計の“HIKARI”とMVRDV らよる“Le monolithe”の間を電車は走りぬけます。あっという間なのでお見逃しなく。

そこは元工業地帯150haを対象としたユーロッパでも最大級の開発地区でローヌ川とソーヌ川の合流(仏語でConfluence)地域を指してコンフュランス地区と言われるようです。現在も開発は進行中で今の二期計画の終了は2025年と言われています。この地区はWWFでも認定され持続可能なエリアであり、またスマートコミティを目指した未来志向の街作りを世界的に著名な建築家が競い合って進めているとても気になるエリアです。エリアは広く建築一つ一つをじっくり見ていくとニ~三日はかかるのではと思われます。

高架の向こうが”HIKARI”

ペルージャ駅前 (空中エスカレーター?)

貸自転車(”ヴェローブ”ステーション)

今回は時間も限られるのでそこに吹いている最新の建築の風だけでも感じ取れたらと思い、ちょうどリヨンの有料乗り捨て自転車velo’v(ヴェローブ)のステーションがたくさんあるのでこれを利用しようと考えていました。ところが日が長い中貸出が18時までなのを見落としてしまって利用に至りませんでした。駅前のトラムの駅の表示ではコンフレンス地区中央まで2800mだったので、さっきまでコルビュジエの作品を見ていた続きでがんばって歩くことにしました。ただ実際に歩き始めると遠くにも気になる建物が見えて自転車があればなと思いました。このvelo’vはスマートコミティの交通としても組み込まれておりこれで街巡りをすることはその意味でも有意義と思います。それにソーヌ川岸の建築を見ながら走れば気持ち良さそうです。機会あれば利用されてはと思います。

そんな状況で今回はZAC(協議整備地区)のゾーン1の中を南下する事にしました。まずドニシュエール通り(Rue Denuzière)を進みます。左右に興味ある建物が続きます。建物の外観からは確かに省エネを意識した建築が多いい様です。ここはまさに現代建築の実験場のようです。

 

Le monolithe(モノリス)が前方に見えてくると特徴のある外壁デザインに圧倒されます。

Le monolitheは5つの建築グループ(EEA/ECDM/Gautrand/Gautier/MVRDV)がそれぞれ設計した5つのブロックがその名の一枚岩の様に合体、そのビルは延べ15,000m2のオフィス、アパートメント、公共スペースの複合体です。特に中央部のマニュエル・ゴートラン(Manuelle Gautrand)のメタリックなブロックは印象的です。こんなオフィスならさぞクリエイティブな仕事もできそうと感じましたが、こんな派手な建物に住むのはちょっと抵抗があるなと思いました。

La Monolithe(EEA/ECDM)

La Monolithe(PGA/MVRDV)

La Monolithe(MGA)

しかし周囲を見渡して納得しました。La monolitheの向かい側の階段を上がっていくと緑豊かな公園、そしてその先に水辺、ソーヌ川をはさんで対岸の緑豊かな丘が見えてきます。近くには大きなショッピングセンターもあります。やはり住居環境は十分考えられているのですね。そしてこんな先端を行く開発地区でも低所得者向けアパートメントの比率は標準より高くしてあるそうです。1950年代のユニテに通じるとことありますね。公園ではさっきフェルミニのユニテの前でボール蹴りしていた少年と同じような少年たちがここでもサッカーボール蹴りをして遊んでいました。同じ居住環境なんですね。

公園に面しているアパート群の正面に回ります。前はソーヌ川につながるボート場(Place Nautique)でまた景色が変わります。そこにはマッシミリヤーノ・フクサス(MassimilianoFuksas)設計の立体的なアパートが連なっていますが、これはユニテの居住ユニットを積み上げた様にも見えました。

この通りには続いてLe monolitheMVDRVブロックが面しています。小さなアルミ製と言われる開閉窓が特徴的で再生エネルギー80%の省エネビルだそうです。隣のHikariNEDOがポジティブ・エナジー・ビルディングを目指してその省エネ技術を提供しているとか。建物一つ一つに興味が持たれます。

La MonolilheとHIKARI

一方、運河の向こう岸はコンフュランスのショッピングエリア、そして左手にはフランス人として初めてプリッカー賞を受賞したクリチャン・ド・ポルザンパルク(Cristian du Portzamparc)設計のローヌ・アルプ地域圏庁舎が行政の意気込みを示す様に周囲の景観にあわせてドンとあります。

ローヌ・アルプ地域圏庁舎

先を急ぎます。コンフュランスのショッピングセンターを抜けて更に南下します。今度はジャコブ+マクファーレン(Jacob+Macfarlane) のオレンジキューブが鮮やかなオレンジ色の目立つ外観で見えてきました。近づくとそのメッシュの様な独特な壁と角の空に抜ける大き穴に圧倒されます。日本だと壁の色だけで物議を起こすような代物ですね。建物というより何かのオブジェの様でもあり本当にこの中で仕事をされているの?と感じます。まあ私の昔の経験だとフランスの方は芸術性の高いオフィスが好きなのですよね。更に数百m先には今度は黄緑色のグリーンキューブが見えてきます。こちらは大穴が二つも開いています。Euronewsの本部として300人近くのスタッフが働いておられるとの事です。これ以上目立つ建物はありませんね。

オレンジキューブ

グリーンキューブ

このあたりはソーヌ川沿いのランボー通り(Quai Rambaud)を進むと良いでしょう。道沿いには以前の港湾施設や倉庫をリノベーションした建物もあり、新しく建設された建物との新旧の対比がが面白いところです。川には艀が係留されており、しゃれた船上レストランも見受けられます。

旧倉庫エリア

ソーヌ川沿い

GL Event本部

またこの辺りでは、先程のエリアとは一味違った現代建築を見る事が出来ます。ひとつはグリーンキューブの先にあるオディール・デック(Odile Decq)設計のGL Event 本部です。建物の前面が道路上に空中に張り出したガラス張りの建物です。この張り出した部分は中を見上げると鉄骨だけで中空でした。

もひとつはグリーンキューブ隣に一か月前に竣工したばかりのルディ・リコッティ(Rudy Ricciotti)設計のRooptop52です。

建物は全面ガラス貼りで曲面を形作り、全体をサンシエイドの横バーが幾重にも覆っています。モノトーンで美しいデザインです。実は今日のコンフュランス地区で一番気に入った建物でした。

ところで屋上には植栽が見え屋上庭園が有るようです。よく見れば構造はまさにドミノシステムのようです。どの階も水平連続窓しかりです。一階のガラス張りの壁を通して見える柱はピロティの様にも見えてきました。今日はマルセイユのユニテを出発して一日いろいろな建築を見てきましたが、この2016年最新施工の建築にコルビュジエを再び見た思いです。

Rooptop52

最後にローヌ川、ソーヌ川合流点をローヌ川側に入りコープ・ヒンメルブラウ(Coop Himmelbau)設計のコンフュランス博物館に着きました。月曜は残念ながら休館で中に入ることが出来ませんでしたが外観からとても大きな建物で複雑な構造であることが分かりました。

時刻は午後八時、まだ十分明るいのですが、お腹もすき、美食の街リヨンを逃すす事もできないので、今日はここまでとしました

          

コンフュランス博物館(正面側)

コンフュランス博物館(後ろ側)

リヨンの現代建築の情報はiPhoneアプリのCityscopeArchiLyonが参考になります。特にCityscopeは建築家自身の動画インタビュもあり面白いと思います。またコンフュランス公式のHPがあり最新情報が掲載されています。最近は隈研吾氏の動画インタビューもありました。  

 

レイモンド・バレ橋