フランス ル・コルビュジエと現代建築の旅

B-2.ユニテ・ダビタシオン

ユニテ 朝日に輝く屋上

ホテル“コルビュジエ”の部屋は、HPの予約ページの写真では窓側がプリーズソレイユやテラス付きの部屋がありました。私はプリーズソレイユに興味がありそちらを予約したのですが、チェックインが遅かった為か窓側に何もない部屋しか残っていませんでした。そのプリーズソレイユがどうしても気になるので、翌日それが有るユニテの商業地区に見に行きました。プレキャストと思われる板のエッジはとてもシャープできれいで、当時の施工技術の高さを再認識しました。

ユニテ商業地区とプリーズソレイユ(右)

ホテルには2泊したのですが、窓側に何もない部屋はつまらないので2日目は空いていたテラス付きの部屋に移りました。結果的に二つの部屋に泊まることになり、部屋によってオリジナルな部分が大分異なることもわかりました。そもそも当初住宅用だったのをホテルの客室に分割転用したわけですから仕方ないことでしょう。

それでも、モデュロールにより作られた空間の中をオリジナルと思われる木製の床を歩き(少しきしむ音がしましたが)、コルビュジエソファに座われば、大満足というところでしょうか。

そして実はホテルに宿泊してこそ得られた体験がいろいろありました。

 

<その一>

ユニテの中いるのですから、思い立った時間に気になるところを見て回れます。

ユニテの中や周囲には独特のデザインの照明機器がありこれがどの様に周囲を照らすかは、訪問した6月は日が長く夜遅く暗くなるのを待たなければなりません。実際にその柔らかな間接照明を見ればまた異なるシーンで建設当時の雰囲気を感じ取る事ができました。

ユニテ内にある照明器具

ところで最近ネモ社(Nemo Lighting)が更にこのユニテの周囲に設置されているコンクリート製の外照明器と同じ照明器の販売を始めました。モネ社は他にもコルビュジエデザインの照明器具を出していますが60年以上経ってもデザインは古びていないのですね

ホテルはエレベーターの近くにあるので、寝ていると三階ごとに加速していくエレベーターのモーター音、日本では聞かない音色の到着チャイムが遠くから聞こえてきます。普通なら「ちょっとうるさいな!」と思うところですが、あ、今住民が帰って来たのだろうか、、、その音に正に「住宅は住む機械”だな!?」と思うと妙に納得して、良く眠りにつけました。

テラス付きの部屋では朝早く、朝日がベランダの格子から床に伸びて少しずつ動いていきます。ベランダの壁はその光に反射して金色に輝いてとても綺麗に見えます。すべての居住区で太陽の光を確保するよう南北方向に建てられたユニテ。その南仏地中海の朝日を体感できます

<その二>

ユニテの屋上は9時から夕方6時までは外部の人も見学できますが、それ以外の時間は屋上に出る扉に鍵がかかっています。ホテルのルームキーにはこの屋上の鍵(トークン)も付いており、一般見学者が入れない時間でも自分で鍵を開け自由に屋上に出れます。鍵を持てば少しユニテの住民になった気分です。

屋上の扉の鍵(白いチップ)

それで朝食の前に早速“9階”に上がりました。天気もよく、遠くを見渡せば、地中海そしてマルセイユ市街が朝日を浴びてすばらしい眺めです。

カモメの鳴き声に空を見上げれば真上を二、三羽舞っています。ここはまさしく船の甲板です。外周にはジョギングが出来るようなトラックが一周してあり端から端まで見渡せます。朝早い為か人影はありません。その内側に、デザインされたベンチや花壇から、幼稚園やジムの建物、そして空に向かって排気塔やエレベータ塔が伸び全体のバランスを作り出しています。歩いていくと見える姿が変わっていきます。写真を撮り始めると止まらないと言うところですね。

近年屋上は補修されている様で保存状態は良いようです。ちょっと荒々しいコンクリ枠の跡は年月の経過を感じさせません。プールの小さな波紋を眺めているとそのまま建設された1952年にタイムスリップしそうです。私にとっては、プリーズソレイユやピロティで比較される事のある同時代の広島原爆資料館完成時の外壁の記憶がよみがえってきました。半世紀以上前のコンクリートをリアルに見せてくれています。