フランス ル・コルビュジエと現代建築の旅

B-6.ル・トロネ修道院

エクス・アン・プロバンスより高速のA7をニース方面に走りその後一般道を10km程度走って到着しました。駐車場は修道院から少し離れたところにありましたが、山の中、結構車が駐車していました。やはり皆さんここへは車で来られるのでしょう。

ついに来たという気持ちと、道がなだらかな下り坂の為か、入口に向けてつい早足になります。城壁の門らしきものが見えてきましたが格子戸の門は閉まっていました。見学者の入口はその右横のギフトショップに入った奥でした。予想していたより見学者は多くて賑わっています。多くの人がこのシトー会修道院の傑作と言われる建物の魅力に引かれてやって来られているのでしょう。

レジで入場券を買って入り口においてあるパンフレットをとります。こんな山奥なのにちゃんと日本語版もありました。緩やかな坂を上っていくと左手に修道院の教会のファサードが見えてきました。石作りの重厚な建物を想像していたのですが、南仏の太陽に照らされてでしょうか、少し赤みかかって見える外壁は明るく繊細に見えたのが第一印象でした。

その下、右に小さな入口がありそこから中に入ります。思ったより明るくほっとします。正面祭壇の方には三位一体といわれる窓が見え、そこから光が綺麗に差し込んでいます。天井には美しいアーチがはっきりと見えます。部屋の中にはほとんど何も事もあって石の存在を直に感じる不思議な空間です。これはここに来てみないと分からない。

ガイドツアーのグループが連なって入ってこられました。そのガイドの声が響いています。気づくと自分のカメラのシャッター音も部屋の中に響いています。何だか高級一眼レフに変身した様でいい写真が撮れそうです!? 

 

 

ツアーグループの先を行く様、足を速め隣の部屋に進みます。壁には小さな窓があるだけです。光がその枠の壁の厚さを綺麗に照らしています。

共同寝室といわれる部屋では、復元されたのでしょうか窓にステンドグラスが入っていました。モノトーンでシンプルですがそれがこの空間に溶け込んできれいです。ちょっと何かが加わるとまた新たな表情を見せてくれる空間です。人それぞれそこにインスピレーションが生まれるのではないでしょうか。

ここへはコビュジエがラ・トゥーレット修道院建設に際して参考にした事で、どんなところだろうか知りたくてやってきました。まだ見学の途中ですが、そんな事はおいてもここは来て見る、そして体感する価値大いにあると思いました。

いよいよ回廊に出ます。その石の厚さに驚かされます。優に1m以上あると思われる厚さのアーチに目を見張ります。ただその厚さが作り出す陰影にあまり威圧感はなくむしろ優しいものでした。すべて人の手で積み上げられたことによるのでしょうか。そして修道院は斜面に建てられている為でしょうか、それを吸収する様に回廊には階段やスロープがあります。その高低が動きを作り回廊の重々しさをなくしているようです。 過去見てきたロマネスク様式の回廊とはかなり異質です。よく見られる柱の柱頭彫刻は一切なく単純な構成ですがそれが凄い存在感を作り出しています。

 

 

回廊が囲む中庭に目を向けると小さな六角形の建物が突き出ており、中には手洗い場が有りました。ヨーロッパの古い街中で見かける噴水のような円形をしています。12世紀こんな山の中でも、大事な水の確保がちゃんとされていた事に驚かされます。

最後に階段を上がりテラスに出ました。下を見れば回廊の全体の構図が分かります。そして周りを見渡せば、それは修道院が建てられた12世紀から変わっていないと感じられる景色です。

 

よく見ると屋根瓦が歴史を感じさせる色合いを出してきれいです。この屋根瓦は当時近くでとれた粘土で焼いて作られたと言われています。その分より景色に溶け込んでいるのかもしれません。

ここ修道院での暮らしは今とは比べようがない程厳しいものだった事でしょう。それでも、今の気候を感じるに、ブドウの木やオリーブの栽培が少しは穏やかなくらしをもたらしていたのではないだろうかとも思い巡らせるものでした

ギフトショップにはサントンなどプロバンスのお土産に加えて、やはり建築に興味がある方の見学も多いのでしょう、建築関係の書籍や資料が結構ありました。こうした資料にはちょっと気になる物もあるのですが、今回の訪問地ではどこでもそこにしかなかった事が多く、気になった物があれば後悔しない様まずは買っておいた方が良いですね。